欧州顧客向け販売のため現地法人としてイタリア法人を設立する

欧州企業との取引において、「顧客からの要望に応じVATコード取得するため」、「信用度を高めるため」といった目的で、現地法人の設立が検討されるケースがあります。イタリアでの法人設立を検討中の方は、すでにイタリアのマーケットにおいてすでに何らかの形でプレゼンスを発揮している企業様になると思いますが、海外での法人設立となると、コスト面やその後のランニングの方法、イタリアならではの商習慣等々、気になるポイントもたくさん出てくることでしょう。ここでは、「販売会社としてイタリア法人を設立する」方法について、コストやメリット、注意点などを紹介したいと思います。

イタリアにおいて現地法人を持つことのメリット

イタリアに現地法人を持つことによって、イタリアやEU圏内の取引先との取引がスムーズになることはもちろんですが、現地見込み客にとっての壁がなくなることが最も大きなメリットと言っても過言ではないでしょう。

例えば、日本法人として見本市出展や商談を行う場合、日本企業であるということだけが原因で相当の機会損失が発生していると考えられます。現地の法人ではない海を越えた取引となると、商品やサービスの取引自体が困難であると受け止められ始めからビジネスの対象として考慮されないということが一般的であることが理由です。

見込客から良いフィードバックが得られていて御社の商品やサービスの市場があることが確認できている場合は、イタリアにおいて現地法人を設立することは、ビジネスを進めていくうえで必要なステップと考えるべきでしょう。

秘書サービス付きのバーチャルオフィス、デスクだけを利用できる会員登録型のオフィスのような便利なサービスがイタリアの大都市には豊富にあり、大きな投資をしてオフィスやショールームなどをイタリアで設立しなくても、現地販売会社としてコストを最小限に抑えてイタリア法人を設立することができるようになっています。常駐する現地社員がいない場合でも、ドロップインで利用できるデイオフィスを利用すれば、日本から現地出張時のみ利用したり、会議の時にミーティングを時間単位で予約することも可能です。

このようなスタイルは、例えば「ミラノサローネ(Salone del Mobile Milano)のような展示会イベントに毎年出店していて、出展中に受注を受けれるようにしたい」「まだ現地に社員を常駐させる予定はない」といったケースにおいても、最低限のコストで現地販売会社としてイタリア法人を利用することができます。

イタリアでの現地法人設立にかかるコスト

ここで、イタリアで一番一般的なSRLという形で法人を設立する場合の費用を紹介します。(イタリアでの一般的な法人形態の紹介についてはこちらの記事をご参照ください。)

資本金(目安として) EUR 10,000.00
目安となる最低資本金額です。

設立時の公証人手数料 約EUR 1,500.00
公証人により金額は変動します。最低1500ユーロ、最高で~2500ユーロ程度で、IVA(VAT税)22%が加算されます。外資系企業への対応に慣れている公証人の場合はやや高めの価格設定のところが多いでしょう。

登録免許税 EUR 200.00
▶印紙税 EUR 156.00
▶商業登記簿への登録料 € 90.00
▶商工会議所の初年度の年会費 € 120.00

これらは、SRL設立時にかかる税などです。商業登記簿(法人登記簿)はイタリアでは商工会議所が管轄しているので、商工会議所への所属と年会費の支払いは必須となっています。2年目以降は売上高や会議所に応じて会費の計算方法が違います。

保管義務のある会社帳簿・会計帳簿等の認証費、台帳購入費 約EUR 350.00
補完が義務付けられている帳簿(例えば株主一覧、総会議事録や会計帳簿など)の台帳を購入して作成し、毎年認証を受けることが義務付けられています。

そのほかのコスト
下記については、イタリアで現地法人を持つ上で考慮しておくとよい必要コストです。

イタリア語の必要書類の翻訳等
社内で翻訳などを行わない場合、重要書類の翻訳費用は、忘れがちですが別途コストとして考慮しておくべきでしょう。

銀行口座管理手数料
イタリアでは現地の銀行の口座を開設し維持しておくだけでも手数料がかかります。銀行の種類や事業規模に応じて、様々な料金体系があります。ネットバンキング手数料や法人デビットカードを含むことが多く、振込サービス等の利用回数などを考慮して決めると良いでしょう。日本からのネットバンキングやアプリで口座のステータスを確認することができます。

PEC (Certified E-Mail)
内容証明メールアカウントも開設が必要です。従来の書留郵便のような利用ができ、ユーザーは少額の手数料を支払うことで、特定の電子メールが送受信されたことを法的に証明することができます。プロバイダの提供するドメインを利用するものや、法人独自のドメインを利用するものがあり、料金は安いものは年間数ユーロ程度で様々なプロバイダから選ぶことができます。

イタリアの税理士・会計士の顧問料
イタリア会計士協会による2024年推奨の年間顧問料(中間値)は、EUR 3,276.00でした。

クラウド型会計ソフト
クラウド型の会計ソフトを利用すれば日本からも経理の事務手続きができます。イタリアではインボイスの電子化が進んでいます。

イタリアでの法人設立について、イメージがわいてきましたか?
ディサント株式会社では、イタリアにおける現地法人設立準備からの伴走サービスを提供しています。お気軽にお問い合わせください。

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